発振回路

2025年3月 7日 (金)

14bitカウンタ74HC4060の発振段はアンバッファ型じゃないのか?

CMOSのカウンタIC「4060」、昔から便利に使ってきました。
例えば、
 ・2024年6月2日:AVRマイコンAT90S1200を使ったデジタル時計
これは4000番CMOSの4060を使って、32.768kHzの水晶を
発振させてます。
停電時のバックアップができるくらい、消費電流は小さいです。

そして、
 ・2022年6月17日:秋月の赤外光送受信モジュール(AE-RPM851A)を使ってみる(IrDAを試す)
これは、74HC4060で4.9152MHzの水晶を発振させてIrDA通信用
ボーレートのクロックを作っています。
この他、いろんなタイミング作りに4060を使ってきました。
401
4060で発振回路を組むのに重要なのが初段のG1ゲート。
11pinと10pinにつながります。

CR発振ならこんな接続。
402
そして、水晶発振の回路例。
403
Rfで帰還をかけてアナログの反転アンプにします。

問題なのが74HC4060を使った時の挙動です。
CR発振だとCp(10~22PF)を入れておかないと
出力にグリッチが乗ってカウントをミスするのです。

この手の発振回路には「アンバッファ型のインバータ
を使います。
4060のG1がアンバッファ型ならグリッチは出てこないはず
なんです・・・。

で、ちょっと調べてみました。
手元にあった日立のHD74HC4060
11pin入力に三角波を入れ、10pin出力を観察します。
比較するのはアンバッファ型の「74HCU04」の出力。

こんな波形が出てきました。
H000  

もう一つ比較したのが4000番CMOSの4060B。
モトローラのMC14060Bです。
H002

これらを見る限り、HD74HC4060のG1ゲートは
アンバッファ型じゃありません。
入力に対して出力の変化が急峻すぎるのです。

バッファ型だと、CR発振回路を構成したときに
出現するグリッチ、出るのがあたりまえです。

HC4060の10pin、このオシロ波形ではきれいにH/Lが
切り替わっているように見えますが、拡大すると
およそ100μs区間で振動波形(ン十MHz)が出ています。

確認したいのは別メーカーの74HC4060。
何かの時に買って試してみます。

前からむちゃ気になっていたのです。

※関連
2025年1月31日:NECは3段タイプの発振回路をすすめてる

※三角波発生回路はこの記事を
2015年07月31日:レールtoレールOP-AMPの特性を見る
単電源オペアンプの入出力特性を調べる
  POTを回して電圧調整するのがわずらわしいので
  ターゲットの電源電圧範囲(GND~+V)を見て
  三角波の振幅を制限するようにしてます。
   こんな実験回路、他にないでしょっと自画自賛

※追記 4000番CMOSの波形
4000番CMOSのMC14060Bの11pin・10pin間の
G1ゲートが間違いなくアンバッファ型であるのを
チェックするため、アンバッファの4069UBと
バッファ型の4000B(8pin入力、9pin出力)の
3つの出力を比較してみました。
  4069Bの手持ちがなかったので
  間違いなくバッファ型インバータである
  4000Bを使いました。
  4000番CMOSのトップ番号。
  こんな(ちょっと変態)接続。
47_20250308165801  
3つの波形。
48_20250308170001
バッファ型である4000Bの出力が急峻になっていて
4060の出力が4069UBと同じような変化なので
4060がアンバッファ型であるのは間違いありません。

4000Bの出力、エッジ部を拡大すると振動波形
が現れます。
70
シュミット入力じゃないので緩やかに変化する
三角波のどこでH/Lを決めるかが不安定になって
しまい、こんなグリッチが出現します。
4000Bの8pin-9pinゲートは4069Bと同じような
3段型のインバータです。

デジタルオシロの無限残光モードを使うと
うまいこと記録できます。


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2025年2月 5日 (水)

CMOS ICを使った発振回路

2025年1月31日:NECは3段タイプの発振回路をすすめてる

この続きで、CMOS ICを使った発振回路、自作したエレクトロニクキーヤー
回路での例を示しておきます。
リンクするページはこの二つ。

2006年06月24日:1975年に作ったエレキーの回路図
2021年9月13日:JK-FF 4027 使用例:ロジックICを使ったエレクトロニックキーヤー

1975年の製作物、これのクロック源はトランジスタでした。
「JK-FF 4027」の記事から、回路図を拾っておきます。

0ek81_01_20250205180001
これは「4538」モノマルチを2段連結にして
クロックパルスを得ています。
モニター音用の発振回路は2段型。

0ek91_20250205180001
こっちは2段型の発振回路。
クロックパルスとモニター音用。

パルス発生の立ち上がり1発がちょっと長くなるので、
それを抑止するのにダイオードでゴソゴソしています。



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2025年1月31日 (金)

NECは3段タイプの発振回路をすすめてる

CMOS ICのノンバッファ(アンバッファ)タイプ、ほんとに
少なくなっちゃいました。
74HCで残っているのはHCU04のインバータだけ。
  シングルゲートでは7SU04が現役

4000番シリーズではかろうじて
インバータが4069UBと4049UB、そして
NANDゲートの4011UBが手に入るようです。

古いファイルやデータブックを整理(いらないのを捨てよう)
していたら1984年のNEC CMOS標準ロジックデータブック
出てきました。
CMOSインバータを使った無安定マルチバイブレータ発振回路が
説明してあります。
要は、
 ・アンバッファタイプを使え
 ・2段タイプより3段タイプがおすすめ
   2段だと発振しないかも
 ・バッファタイプだと異常発振

※pdfをアップしておきますのでご一読を。
  ダウンロード - CMOS発振回路.pdf


HS-CMOSを使うと、異常に遭遇する可能性が高くなります。

2段タイプの発振回路例
G11_20250131155001

3段になっても原理は同じです。
G12_20250131155101
1ゲートでon/offするならシュミット入力NANDゲート
がおすすめですが、安定度はもうひとつ。
G13_20250131155101
確実に異常に遭遇するのが74HC4060を使った場合。
A11_20250201083301  
Cpコンデンサを入れておかないと、カウントをミスして
欲しい周波数のパルスが出てきません。

発振部の出力にグリッチが乗ってしまい、カウントが
好き勝手に進むのです。
  高周波のグリッチをカウントしてしまうので
Cpでそれが避けられます。

でも、MC14060B(4000番CMOSの仲間)だとCp無しでも
正しくカウントしてくれます。
  「昔は大丈夫だったのに」に出会えます。

モトローラのMC14060Bのデータシート。
その発振段の説明はこんな図になっています。

G14
リセット入力で初段ゲートを殺して発振を止めるように
なっているのですが、G1の絵では
  出力をフローティングに
というふうな感じに受け取れます。
G1出力が浮いたらG2入力も浮いてしまい、
  ちょっとヤバいんじゃ
と思ってしまいます。
  ※CMOSの入力は浮かしたらアカン

昔々、これを確かめたことがありました。
G1はゲートで、フローティングにはなりません。

74HC4060では、このように描かれています。
G15
上が東芝ので下がTIの。
MC14060Bでもこれと同じでした。
G2入力は浮きません。

4060、スピードやドライブ能力、電圧下限を許すなら
MC14060Bのほうが安定して使えます。

CR発振をon/offしたいとき、アンバッファ型の
ゲートが無いので、しかたなしにHC00を使います。
  ※4011UBの出番なんですが
例えば、こんなブザー駆動回路です。
G16
Cpを入れないと出力波形にグリッチが出ます。
しかし、Cpを入れると、電源電圧が影響して
発振しないとか異常な周波数で発振とか、
おかしなトラブルがおこるのです。
この回路が出すのは単純な音。
ブザー駆動波形のエッジにグリッチが出ていても
「気にしない」ということで、Cpは入れません。


※関連
2017年9月16日:枯れた技術の伝承が・・・
2017年9月17日:枯れた技術… んっ! 枯れ過ぎた?

リップルカウンターICをアナログで使う:Hanako's Papa
インバータを使った矩形波発振回路:meyon's STUDY
デジタル時計をつくる (7) / 32.768KHz 発振回路:meyon's STUDY



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