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2024年9月20日 (金)

「導通チェッカー」から「配線チェッカー」へ

先日来、こんなプロジェクトが進行。
きっかけは 東大阪市の関西電機工業 さんからのhelp。

  製造しているキュービクルの配線をチェックしたい。
  配線にトランスが入っていると直流的には導通と同じで、
  普通の導通チェッカー(BZM3を買ってもらった)では判別
  できないので、なんとかならないか・・・

  ホロホロブザーを使っていたが、今はもう手に入らない。
    ホロホロブザーはトランスを判断できるんです。
    抵抗だけでなくインダクタンスがあると音色に
    変化が出ます。

で、検出回路をあれこれと。

・こんなのできたよ:
  トランスが入った回路の導通チェッカー。
     配線チェッカーと呼ぶ方が良いかも。
  今のマイコン型導通チェッカーは、
  「電子回路の配線チェック用」でしたが、今回のは
  「配電盤の配線チェック」に特化しました。

・検出電流を交流にしました。
   トランスを介した配線のように、線路のインピーダンスが
   高ければ導通なしと判断します。
   配線がダイレクトにつながっているときだけ導通あり
   として、ブザーが鳴ります。
     コンデンサが入った回路だと導通ありとミスするの
     で、直流方式の判定回路も残してあって切り替え
     できます。
   直流抵抗がほぼゼロの100kVA・6600V:200Vトランスや
   6V・1A出力のトランスコイルを介したつながりが判断で
   きます。

こんな回路 (クリックで拡大↓)
Tn841_05b

・電池電圧3Vで1kHz(~5kHz)の方形波を出し、電流検出抵抗
 150Ωでの電圧ドロップを増幅・整流して導通を判断します。
   短絡で20mAという電流になります。

・大きな制御盤だと、あっちとこっちの配線を見るのに、
 接続用のリード線をチェッカーから伸ばさなくてはなりません。
   場合によったら数メートル。
 その接続用リード線の抵抗を補正するため、検出レベル調整
 用の「ボリューム」を設けました。
   怪しい接続状態を知らせるための「断続報知」機能も
   あって、これも調整できます。
 針式テスターのゼロオーム調整のイメージです。

・欠点として・・・保護回路が入っていません。
 通電中の回路に触れると、電圧にもよりますが・・・壊れます。

・可動鉄片型交流電流計(CTの先につなぐ5A計)の微少な
 インダクタンスでも判別できるよう、出力方形波の周波数を
 5kHzまで上げられるようにしました。
   当初は1kHzだったのを設定できるように。

・オペアンプを両電源で使っているのは、当初、
 同期検波回路でリアクタンスを判別しようとしたから。
 でも、回路規模が大きくなってしまい断念。
    LCRメータが作れるぞ!に。
 単純な増幅整流回路も両電源のほうが楽だし、あれこれ
 実験してた残りで、マイナス電源が残りました。

・クリップ短絡で電源オン。
 チェックをせず3分放置で自動電源オフという便利な
 機能はBZM3を引き継いでいます。
   最初は1分でしたが、盤の裏に回り込んでチェックする
   端子を探していたら1分では不足だ(怒)っと3分に。


詳細は
KANSAI DENKI AI & IoT 2024-09-12:配線チェッカー(新ホロホロブザー)

※関連
電子回路の導通チェックに! マイコン型導通チェッカー組み立てキット

2012年02月11日:導通チェッカーの検出抵抗値を下げたい
   ↑トランスの話が出てきます

※参考
配線チェックしようとしている盤には、慣れ親しんだ
電子回路の設計では見たことのない回路記号が出てき
ます。

Ee2_20240920132301

使う「単位」が違う(桁がぁぁ)。
  触ったら死にます。

丸二つに△とYの記号は三相のトランス。
  電圧が6600V:420V。 容量が500kVA。


※追記 (09-22)

単相の交流電流を計るならCTは一つ。
Z11_20240922115901
トラ技2024年10月号に「加熱完了報知回路」
この時は又裂きした延長コードの片側にCTを入れて
フライヤの電流を見ました。

交流ですので極性はなし。
CTの端子、電流計の端子を入れ換えても値は同じ。

三相交流だとこんなつなぎ。
Z12_20240922120501
RST各相にCTを入れて、それぞれに電流計を
つないでいます。
でも、これだともったいない。

CT二つで、各相の電流を計る手法がこれ。
Z13_20240922120601
120°位相の三相交流だからできる芸当。
この時は位相が絡むので、CTの二次巻線の出口は
ちゃんと向きを確認してつながなくてはなりません。

実際の配線図ではこんなふうに描かれています。
Z14_20240922120801
電流計を一つにして「AS:交流電流計用切替スイッチ」で
RST相のうちの一つだけを選び、読み取ります。

電圧計での相選択は2極を普通に切り替えるので分かり
やすいのですが、CTの出力を切り替える場合、
   オープンにしたら高電圧が出るので
   オープンにしちゃダメ。
という制限があります。

どんなふうに切り替えるのか・・・
  中村電機製作所 交流電流計用切替スイッチ SP-A
この説明書がわかりやすいでしょうか。

巧妙な接点が使われています。
簡単に描き直してみました。
Z17  
左方向へ回すと
  OFF R相 S相 T相 OFF
と切り替えが進みます。
OFFの位置では二つのCT出力を両方とも短絡するのが
分かります。
R相の読み取りではT相側を短絡。
T相の読み取りではR相側を短絡。
  読み取らない方のCTは短絡状態に
  なるよう、ほんと、うまいこと切り替え。
S相はR相とT相をつないで、そこからの流れ
(三相のベクトルだぁ)を読み取ります。

さて、これがCTの先につなぐ5A可動鉄片型交流電流計。
Mt11
こんな記号。
Mt12
そして、使うCTの定格も記されています。
Mt13
CTの一次側に500A流れたら電流計に5A流れて、
メータ指針が500のところにきます。

目盛板を外すと、こんなコイルと指針機構が見えます。
Mt14

直流抵抗ざっと0.03Ω。
インダクタンスがおよそ16μH。 (私とこの計器で)
このメータを介しての「つなぎを判断できれば」という
要望だったわけです。
直流では無理。
5kHzだと0.5Ωくらいのインピーダンスになり、なんとか
判別できるかというところまで追い込めました。

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コメント

産業用機器は色々な回路の集合体です。製造の際も確認しながらの作業をしてますが配線の振り替わりは出てしまいます。そこでその間違いを見つける事が出来れば作業者の負担は減ります。ホロホロブザーは長年その部分を担って来ました。その代わりを探している人は多くいますがその機能を理解し再構築して頂きました。元々の導通チェッカーの判定の手法が大きなヒントになりインダクタンスをインピーダンスとして負荷を判別しています。接点などは接触状態で1Ω以上になる事があります。機器の動作に何の影響もありませんが配線チェッカーの判定基準に影響があります。その為に断続放置を設定する事をお勧めします。リレーは直列に繋ぐ事もあり設定は3Ωがお勧めです。インフラの下支えにお役に立てれば大変光栄です。

投稿: 渡邉 | 2024年9月20日 (金) 21時26分

 これ、欲しいです!

投稿: JI3KDH | 2024年9月21日 (土) 07時11分

『欲しい!』のリクエストは、このページにありますように、
  https://kansaidenki.biz/2024/09/07/
私とこではなく、関西電機工業さんにお願いします。

回路設計と試作、制御ソフトは私がしましたが、基板のパターン設計やケースをどうするかなどは、関西電機工業さんの受け持ちでした。

投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2024年9月21日 (土) 16時16分

でかいトランス、インダクタンス成分だけじゃなく油につかっているせいなのか、キャパシタンス成分があるのです。
そのせいで、パルスを与えた後の挙動(観察される波形)がややこしくなっていました。
瞬間的なタイミングを見るだけではアウト。
コイルに電流を流したら、最初は流れないというのが。キャパシタンス成分でおかしな波形になるのです。

投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2024年9月21日 (土) 16時23分

弊社品質保証の担当者と検証、居酒屋ガレージさんで改善策や改良を繰り返して完成しましたが製造の実質的な検証待ちです。機能的な部分の変更はありませんが(負荷が配線の容量成分や誘導成分以下の検知以外は出来ると思います。)使い勝手の修正はあるかも知れません。その後販売を計画しています。

投稿: 渡邉 | 2024年9月21日 (土) 21時28分

渡邉さんのコメントのように、生まれたばかりのツールです。
現状、まだまだ「人柱」が必要なタイミングなのです。
  私とこ(アクト電子)では検証しようのない「強電」環境用のツールです。
それでも「使ってみるぜぇ」という方は、ここにコメントしていただければ(連絡のつくメールアドレス記入で)、「なんとかなるかも」かもしれません。

投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2024年9月21日 (土) 21時40分

アクト電子さんで丁寧に作って頂いたので人柱と言うほど危険な物ではありません(笑)ある意味マニュアルLCRメーターです。抵抗として1Ωから10Ω程度を判別する機器です。直流モードは従来のマイコン導通チェッカーとしても使えて交流モードはインダクタンスはパルスを送ってインピーダンスで直流抵抗が少ない負荷を判別出来る面白い機器です。インダクタンスの計算は秋月のLCRメーターの数値で計算する必要がありますが確かにインピーダンスはその前後で判別しています。機器としては完成度は高く作業者が普段扱う負荷がどの様に挙動しているか理解しないと使いこなせない程、優秀です。リレーの接点抵抗や手動切替器の抵抗があるタイミングで1Ωを超えて配線チェッカーの問題と勘違いする事やオープンコレクタの様な無接点リレーは電流を多く送るために判別する抵抗値を3Ωまで上げなくてはいけません。負荷の挙動は経験値の短絡してる筈と言ったアナログではなく実際の機器の挙動を理解しないと不良品と勘違いされるのでドキュメントは冗長になりましたが慣れれば従来のホロホロブザーと同じ様に使えます。それ以上の性能でCTや高圧トランスの2時側やインダクタンスの非常に小さいアナログ電流計も判別出来る様にしました。デジタル電流計は更に小さなインダクタンスで試験端子の線のインダクタンスより小さいので断念せざるを得ないのが残念でしたが裏を返せばそれくらいの精度で設計製作して頂いた自信作です。購入希望の連絡があれば直ちに担当者にフィードバックして入手出来る様努力致します。また使用後感想などお聞かせ頂いたら可能な限りアップデートを検討したいと思います。

投稿: 渡邉 | 2024年9月22日 (日) 01時22分

社内でも理解出来ている人は少なく手順に従って数値が基準値に収まっているかわ確認する程度なので大変ありがたい解説を追加頂きありがとうございます。

投稿: 渡邉 | 2024年9月22日 (日) 15時32分

開発者ページが12月に閉鎖されるので同じ内容ここに貼っておきます。

投稿: 渡邉 | 2024年9月28日 (土) 16時41分

https://flirleptondrone.blogspot.com/2024/09/blog-post.html

投稿: 渡邉 | 2024年9月28日 (土) 16時41分

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