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2023年9月25日 (月)

やっぱりあかん パワーMOS FETの並列接続

・目的 12V・10A電源の特性調査用
    定電流負荷回路の製作

・120Wの電力を受けられるように

過去、定電流回路(定電流負荷)をあれこれ作って
きましたが、120Wというのは未体験。

電流検出抵抗の電圧降下をフィードバックして
パワーMOS FETのゲート電圧を制御というのは
変わりませんが、問題はパワー。

※過去の失敗談
2014年03月26日:ACアダプタ試験回路:電気は熱になるんです…
※関連
2020年8月27日:オペアンプとMOS FETを使った定電流回路・・・電子負荷回路・・・
2021年4月4日:オペアンプとMOS-FETを使った定電流負荷回路
2011年09月23日:並列抵抗で 250W
2011年09月26日:電子負荷稼働中 菊水電子製 レンタル品

この電力、一つのFETじゃとても無理。
ということは並列接続して発熱を分散。

こんなFETの買い置きが残っていたんで並列接続を
試してみました。 ・秋月電子:60V・100A・255W

まず基礎知識。 FETの温度特性、

・温度が上がるとオン抵抗が大きくなる。
 ということは、並列接続で電流が流れて
 温度が上がった素子は、オン抵抗が大きく
 なることで電流が減る。
 並列接続での熱暴走はしない。

・しかし! これはスイッチングしてるときの話。
 電子負荷のようなリニア領域での制御では、
 Vth、Vgsの特性が重要。

・残念ながら、温度とドレイン電流の関係は
 並列接続には向いていない。
 一定のVgsでも温度が上がるとドレイン電流が増大。
 リニア制御では、温度が上がったらその石に電流が
 集中してしまう。

温度とオン抵抗のグラフ。
F22

温度が上がるとオン抵抗が大きくなる様子が
見えてます。
しかし、これはVgs=10Vとゲートが十分にドライブ
された状態の話。

温度とドレイン電流の関係がこれ。
F21_20230925165201

ドレイン電流の立ち上がり部分、Vgsが一定でも温度が上がると
電流が増えちゃう様子が浮かんでいます。

ということは、単純にこんなつなぎ方だと、消費電力を
分散できないという話。
F11_20230925165301
FETを2つ使って、実際に試してみました。
  特性は選別していません。
  パーツボックスにあった「TK100E06」FETを
  任意に取り出して配線。
  ヒートシンクは17cm四角。厚さ35mmの大きいの。

ドレイン側に抵抗を入れてそのドロップを見ます。
電流がアンバランスになると、電圧ドロップが
どんどん大きくなります。
F12_20230925165401
流した電流は1A。
電圧が12Vですので、それぞれ6Wを受け持ってくれれば
okなんですが・・・

チャートレコーダー(プリンタシールド応用) で記録します。
G10
時間経過とともに発熱してQ2側の電流が増大。
Q1には電流が流れなくなり、「なんのための並列!?」
という状態に。
単純なつなぎではうまいこと行きません。

そこで、FETのソース側に抵抗を入れてアンバランスを
吸収できるようにしてみました。
電流が大きくなるとVgsを下げる方向に働きます。
まず「0.47Ω」。
F13_20230925165901

これだと、8割くらいの電流差に落ち着きます。
G11_20230925165901
途中で2A→3Aに増やしてます。

ソース抵抗を1.0Ωすると、こんなグラフに。
G12_20230925165901

しかし、1.0Ωだとこの抵抗の発熱がひどくなってきます。
5Wじゃ足りません。

どうしたものかと思案中。
トランジスタ技術2015年1月号の方法・・・
FETごとにアンプと電流検出抵抗を設けて、
共通の制御電圧で電流を設定します。

GND側の配線抵抗の影響は差動アンプでキャンセル
しちゃうというアイデアです。

F14
記事ではFETを3コ使って40Wを目指しています。

ゲインのある差動アンプ(電流検出アンプ)を使うと
電流検出抵抗の値を小さくできるし。

どんなもんかな。

※実験の様子
Tt11_20230925172501

※追記
ソースに入れたバランス抵抗。
バイポーラトランジスタならVbe電圧の0.7~0.8Vあたりで
バランスが得られます。
それが今回のMOS FETだと4~5V。
MOS FETだとVgs電圧が大きいぶん、効きが悪くなります。

オペアンプの出力にFETを入れて、そのソース電流で
バイポーラトランジスタのベースを駆動。
これだとどうでしょう。
うまくバランスをとってくれるかな。

※追実験
手持ちのTO-220やTO-3Pのバイポーラ・トランジスタ、
高圧スイッチング用のばかり。
2SD880と2SD768(ダーリントン)が発掘できました。
こんな回路で実験。
Cc11_20230926164701
こんな接続で、バランスがうまく行きました。
0.1ΩでもOK。
でもダーリントンの2SD768にするとダメ。
0.1Ωでは電流が片寄ります。
電流検出抵抗を一つだけにしておきたいんで
トラ技2015年1月号方式は「ちょっとなぁ」
なんです。

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電源」カテゴリの記事

コメント

なるほど、その手がありましたか。バイポーラトランジスタも捨てたもんじゃありまぜんね。
あとこれってIGBTみたいなものなのでいっそのことIGBT使う手があるかも、と思いました。でもスイッチング用しか売られて無さそうだし値段も高そうなので出番は無いかなー

投稿: ラジオペンチ | 2023年9月26日 (火) 20時59分

やっぱトランジスタを並列かな。
手持ち部品が無いので入手まで作業は一時停止。

トラ技2015年1月号方式も、利点はわかるんですが・・・

投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2023年9月27日 (水) 08時23分

バイポーラトランジスタを使った場合、Rs抵抗でのドロップに加えてVbe電圧とベース抵抗での電圧が足されて、定電流できる最低電圧が高くなってしまいます。
テスト的にTr二つ使って2A流した時(各Tr 1A)の最低電圧は2.0Vでした。

投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2023年9月27日 (水) 08時30分

120Wの電力、4石で受けようと(各石30W)思っていたのですが、もう2つでも石数を増量しておくほうが安心かなぁ。
ヒートシンクへの装着、絶縁のためにシリコンシートをはさんでいます。
実運転では電流チェック抵抗は不要なので、放熱のためには石を直付けでしょな。
コレクタが共通なのでプラス入力端子と同電位になりますが。

投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2023年9月27日 (水) 08時37分

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