JIS、IECの論理回路記号
ANDやORの論理記号について、ちょっとあれこれ話をしてました。
※抵抗やスイッチなどはここであれこれ。
「電子工作」のキホン
「子供の科学」の回路図記号
今回は論理記号を掘り下げて。
NANDとNORをトラ技(MIL記号)と新JIS、IECで比べると・・・
この違いは、あちこちで紹介されていますが、入力を負論理に
するとどうなるか。
MILなら一目瞭然なんですが・・・
新JISだと、「&」が「≧1」に。
さて、IECの場合の負論理記号はどうすれば?
JISの「まるぽち」のくっつき方だと「下」のほうかな
と思えるのですが、IECの矢印は信号の向きを示すという
ことで、上が正解。
通常、信号の流れは「左から入って右へ出て行く」ように
描くんですが、信号処理の具合で右入りで描きたいときも
あるわけです。
MILなら「出力側がすぼんでいる」ということで、ANDも
ORもINVも見た目が分かりやす。
でも、新JIS、IECはちょっとわかりにくい。
直感的じゃない。
ORの「1≦」は向きを示しているように見えるんで、なんとなく
信号の流れが分かります。
しかし、「&」は直感から外れます。
そして、IECの矢印は信号の流れということで、まだまし。
ゲートの中にはこんなのもあります。
入力が2つあって、それを「AND」して、出力が正論理と
負論理で2つ。
出力が2つ存在するのがあります。
MILなら入出力間違いませんが、JISもIECも
「なんじゃこりゃ?」。
「▲1」は左右どっちがどっち(入出力)か直感で
分かりますか?
ということで、私の場合、死ぬまでトラ技方式(MIL)で
描かせていもらいます。
※追記:資料として
新JISやIECの論理記号、これをまとめてあるのが
TIのこの本。
『標準ロジックIC ポケット・データ・ブック』、
持っているのは1998年版です。
この付録ページに解説が載っています。
今回、あらためてこの資料を読んでみました。
負論理を示すJISの「まるぽち」とIECの「矢印」記号。
これは「表記方法が異なる」もんだと思ってたんですが、
【表2】の最初の4行を見ると・・・
「同じなん?」「どっちでもOKなん?」
と・・・
原文(英語か)を見てみないと。
はてさて。
| 固定リンク
「技術史」カテゴリの記事
- 4000シリーズCMOSの先頭、4000Bと4000UB(2025.03.10)
- NECは3段タイプの発振回路をすすめてる(2025.01.31)
- トラ技11月号 異端の記述:『オペアンプ』(2024.10.24)
- 「水晶板ピエゾ電気計」とは(2024.08.20)
- 古いファイルを整理していたら・・・トラ技のGND記号(2024.07.30)
コメント
店主さま,いつもブログを拝見して楽しませていただいております.
>【表2】の最初の4行を見ると・・・
> 「同じなん?」「どっちでもOKなん?」
最初の2行は論理的論理であり真理値表(truth table)に対応する説明です.つまり真か偽か,1か0かに関する説明です.
次の2行は電気的論理であり機能表(functional table)に対応する説明です.つまりHighレベルかLowレベルかに関する説明です.
MILのロジック記号はHかLかの電気的論理を表すのであって,1か0かの定義がありません.
一方,IECやJISのロジック記号は電気的論理(HかLか)と論理的論理(1か0か)を描き分けることができます.
店主さまの図に追記すると下記のように表せると存じます.
https://diy.engineers-net.com/symbols/MIL_vs_IEC-JIS.png
余談ですがJISの2値論理記号は手持ちのJIS規格書によると,1982年にはすでにIEC 60617と同じ記号が定義されていました.
無線技術士の国家試験の出題では数年前にIEC記号に切り替わりましたが論理記号だけはMIL記号が使われているようです.
投稿: marry | 2021年12月28日 (火) 10時19分
Lと0、Hと1。
「どうちゃうねん?」「おんなじ?」
「ちごたらややこしいと思うけど」っと。
CMOSの入力は電圧なんですが、TTL(LS構造はちょい違うけど)は内部トランジスタのエミッタに電流が流れることによりTrがアクティブになります。
その状態で入力端子の電圧を見たら「L」レベルになっている・・・
アナログ的にはこんな動き。
「-○」記号も「->」記号も意味するところは一緒?
3行目に「正論理の-○と等価」っと記されているし。
『電気的論理(HかLか)と論理的論理(1か0か)を描き分ける』とのことですが、これを描き分けなければならない場面って出てきます?
IECの「->」矢印マークは、負論理での入出力方向を明確にするのが目的じゃないのかと。
でも、正論理で単なる「-」だけだと入力か出力かが分からないし。
IECの記号、IC個別の入出力構造を説明するために使うには納得いくんですが、多数のICを組み合わせて制御回路を描くには「ちょっとなぁ」と感じます。
昔々(1980年代)、当時の超高速回路のからみで「ECL」を使ったことがあります。
接続点、VEE(-5.2V)へ抵抗でターミネートするんですが、高速パルスなのにオシロで見るとむちゃキレイ。
「さすがECL」と思い出します。
電気むちゃ食うて熱くなるけど。
ECLの場合、H/Lがややこしい。
なんせ電源が「-5.2V」。
投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2021年12月29日 (水) 09時53分
ECL、使ったのはモトローラ、日立、富士通あたりだったか。
型番「MC10xxx」とか「HD10xxx」。 …忘れた
オシロでの波形観察、つながるTTLの信号も見るんでプローブのGNDは回路のGNDに。
すると、ECLの信号はGND基準だとマイナスに振れててH/Lがこんがらがったりと。
頭に超高速カウンタICがあって、そこからの信号をECLであれこれ。
投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2021年12月29日 (水) 10時15分
ECLのロジックもMIL記号で表されます。
GND基準だと、H=1はちょっとマイナス。
L=0はもっとマイナスに。
投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2021年12月29日 (水) 10時25分
marryさん、グダグダ言って、どうもすみません。
IECの表記方法、もっと手があったんじゃないのかと思うんですよ。
投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2021年12月29日 (水) 17時52分
店主さま,
レスありがとうございます.知ったようなことを書いてしまいましたが,私自身まだまだ調査中でございます.
四半世紀ほど前にMIL記号を使った回路図の真理値表を1/0で書いたら,上司から怒られたことがあります.MIL記号はH/Lしか記述できないので,そもそも真理値表が作れないというのです.どうしても1か0か,つまり真理値表であらわすなら,Hが1でLが0だとか,正論理だとか決め事が必要だというのです.それ以来,気をつけているのですが,釈然としないまま今日に至っています.
>『電気的論理(HかLか)と論理的論理(1か0か)を描き分ける』とのことですが、これを描き分けなければならない場面って出てきます?
私の経験では,そんな場面は出てきたことがありません.しかし,想像してみるに,たとえば次のような場面があるかもしれません.
HDLなどで言語入力したソースの記述が正しいかどうかを人間が判読しやすいよう回路図出力するような場合です.ただ,この用途でもIEC記号よりMIL記号のほうが直感的にわかりやすいはずです.
一方,IECが長方形のロジック記号を定めた理由が気になりますが,解明の糸口が見つかっていません.IECの長方形ロジック記号の起点は1972年の「IEC 117-15:1972」のようです.これは名称が変更されて後に「IEC 60117-15:1972」になります.さらに改版されて「IEC 60617:1985」となり,それを直訳したのが現行JIS規格の「JIS C 0617: 1999」です.
歴史的経緯をたどって見たのが下記の表です.(まだ作成中で未完成です)
https://diy.engineers-net.com/symbols/MIL_vs_IEC-JIS-trend.png
おそらく最初期の実用例はTIのTTLデータブック1967年版に見られ,MIL記号と1/0表記のTruth Tableが登場します.その後,1981年版では1/0表記とMIL記法の齟齬に気づいたのか,H/L表記とFunction Tableに変わります.さらに1983年になるとIEC記号が採用され,1984年のデータブックではMIL記号が姿を消してIEC記号+H/L表記とFunction Tableに変わります.
一方,東芝の1985年版のC2MOSデータブックでは,MIL記号+H/L表記のtruth tableです.
ここまでをまとめると,次のルールがあるようです:
(a)MIL記号を使うならH/Lで表記する
なぜならMIL記号はMIL規格によって電気的論理しか記述できないから.
(b)真理値表(truth table)は1/0で表記する
H/Lで表記したものは機能表(function table)であって,真理値表とは区別する.
さて,手持ちのJIS規格書で最も古い「JIS X 0122: 1986」は,なんとすでにIEC記号が使われていて愕然としました.つまり1999年にJIS X 0617が制定される前から,JISはIECロジック記号だったんです.
しか~し,現場ではMIL記法が事実上の標準として使われ続けているのはご存じの通りです.
じゃあ近年はどうかと調べてみると,またまたビックリ!
21世紀に入るとTIのデータシートや東芝のデータシートではIEC記号が消えて,MIL記号が復活しています.ただし,組み合わせ論理に関する限り,1/0表記の真理値表ではなく,H/L表記の機能表になっています.
経産省傘下であるJISCがIEC規格を採用するのは,日本政府が1995年1月のWTO条約発足と同時にWTOへ参加していて,TBT(技術的貿易障壁)を設けないよう努力する義務がある,つまり国際的な標準規格が国内規格に優先するからだろうと思います.
電気の世界を標準化したいIECとしては,電子技術の世界も自分の領域と考えているんでしょうけれど,現実の電子世界は米国の覇権領域です.そこでの国際的な標準規格は,米国規格ですよね.
ISOの世界では,ISOメートルねじに反発した米国陣営がISOインチねじ(ユニファイねじ,UNF)を策定しました.これと同様に,IECの回路図記号に関する規格にAnnex(付属書)の形でMIL記号を認めてもらうのが現実的な落としどころじゃ無いかなぁと考えております.
長文で失礼しました.
投稿: marry | 2021年12月30日 (木) 18時20分
「0と1」で示す真理値表、単純なゲートの入出力だと「L=0、H=1」で確定できるけど、フリップフロップやカウンタなどの機能IC、スリーステートバッファや双方向バッファの機能表現は「0、1」では無理。
入力だと、_↑ ̄ ・  ̄↓_ のエッジクロックや_| ̄|_ のホールドクロック、出力だと、ハイ・インピーダンス状態や /Q0 出力反転、これらも「0と1」では表現できませんよね。
「0、1」じゃなく「H、L」を使うってのはここらあたりも関係するのでは?
ICの性能、クロックに対するセットアップタイムやホールドタイム、出力遅延を表現するのも「0、1の2区分」だけじゃどうすればっと。
「0、1」は2つだけだけど、「H、L」は他にいろいろくっついてくるんで、別もの?
投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2021年12月31日 (金) 10時02分