AD620を使った計装アンプとシミュレーテッド・インダクタを使ったノッチフィルタ
※別記事にするのもということで、この記事の後ろ部分に
あれこれ追記しています。
シミュレーテッド・インダクタを使った60Hzノッチ・フィルタ:これから
の続き。
まずAD620を使った計装アンプ。
(電源回路を加えた図はまた描きます)
JP1のジャンパーで利得を設定。
「RG」端子間の抵抗値で利得が決まります。
ジャンパー無しで1倍。
1・2・5ステップで1000倍まで。
原理上のきっちり値しにしたいので、直列にしたり
並列にしたり。
「8.2Ω」があれば、x50とx200をきっちりに
できたんですが、手持ちがありませんでした。
※直流電圧を見るんで、高倍率にした時のために
「オフセット調整がいるのでは?」
と思ってたんですが・・・不要と判断。
むちゃエエ性能です。
そして、シミュレーテッド・インダクタ回路。
参考図書は 「稲葉保 著 精選アナログ実用回路集」
↑
※OP-AMP応用のバイブル的参考書です。
1989年1月10日の初版を買ってました。
「17-10」でノッチ回路への応用が紹介されています。
「60Hz」に合わせて、ざっとこんな回路で試します。
上段は差動アンプ。
差動アンプの正入力と負入力をつなぎ、
・・・つまり、同じ信号を入れると・・・
差動アンプはその差を出力するわけですから、
出力はゼロのままで動きません。
その正入力側のGNDに向かう抵抗に「LC直列共振回路」を入れ
ます。
共振周波数でインピーダンスはゼロ。
入出力を短絡した差動アンプと同じになり、
出力は出てきません。
つまりノッチフィルタ。
直流信号に対しては「CT」でカットされるので、
VinがVoutに出てきます。(反転されずに)
共振周波数から離れた信号も出てきます。
こんな原理です。
※ブレッドボードで試してみましたが、「Q」が高くない。
オーディオ・イコライザー的な用途ではOKかもしれませんが
今回の用途ではちょい不満。
R1を100Ωに、R2を1.2MΩにして試してみましたが、劇的な
改善(高Qに)はしません。 (そんなには変わらん)
やっぱし「ツインT」かな。
※R1=1kΩで 12Hz~220Hzをスキャン
ツインT はもっと切れた!
※差動アンプとフィルタをでっち上げた目的は
このサーミスタ温度計で使っている16bit A/D、
LTC2460の入力電流を測定するため。
※この回路↓のR3両端(IC1の入力)の電圧を
IC1を入れずに(R3+C1 → LTC2460入力へ直)
観察。
1秒周期で1サイクルだけ変換するテストプログラム
を書いてみました。
60HZの誘導ハムの影響が小さいよう、サーミスタ
入力をGNDに短絡。
(R3の左側がGNDに)
計装アンプで1000倍に増複。
すると・・・
A/D変換中、R3に電流が流れていることが分かります。
これで誤差が発生。
バッファアンプ、IC1を入れたらこのドロップは生じません。
ノッチフィルタの特性が良かったら、観察波形から
60Hzの誘導ハムを消せるのではないかと・・・。
※LTC2460の入力等価回路
RsとCINは外付け部品。
データシートには、標準は「1kΩと0.1uFを」と。
そして、
「大きなCINは入力ピンに良好な
ACグランドを与え、信号源への
反射を減らすのに役立ちます。」
と。
データシートに記された入力サンプリング電流は
typ値で「50nA」。
Rsが1kΩだとドロップは「50uV」に。
・・・ざっと合っている・・・
※Vrefが1.25Vで16bitだから1LSBは20uVほど。
この電流、一瞬じゃなしに18msというサンプリング時間中、
ずっと流れているのかと。
瞬間的な電流だと(A/D内部にS/Hが入っているなど)、
Cinが頑張って保持してくれるんですが、「18ms」と
長いとふんばりが効きません。
姉妹品のLTC2462は入力が2つあって差動入力に
なっているんで、どっちも同じように動くとバランスが
とれちゃうんで、それで気付かないのかしら、と。
※秋月電子:LTC2462 ・・・300円
※追記
LTC2460の入力電流「50nA」がどのくらいの大きさなのか
バイポーラ・オペアンプの入力電流(Ib)と比較してみます。
オペアンプ名 Ib(typ)
LM741 80nA
LM358 10nA
NJM4558 25nA
汎用オペアンプだとこんな値。
入力(帰還)抵抗を少々大きくしてもmV単位のオフセット電圧に
隠れてしまってバイアス電流による電圧変動は目立ちません。
「MΩ」にするとさすがにまずいですが、そんな時はFET入力の
オペアンプの出番(IbはpA単位に)ということになります。
※検出波形→ツインTノッチフィルタに
Q=5.25の60HzツインTノッチフィルタを試してみました。
計装アンプは↑と同じAD620。
サーミスタ入力を短絡してR3両端を測定。
こんな波形に。
60Hzの誘導ハムをなんとか取り除けて、欲しい信号
の状態が浮かび上がったかと。
そして、サーミスタを外してオープンにして、
Rs(10kΩ)を含めて計ってみると・・・
抵抗値が約10倍になったので、ドロップ電圧も約10倍に。
実値で0.5mVほどに。
入力電圧はプラスのVrefですんで、電流が流れ込んでいます。
16bit A/Dの、A/D値に換算すると26ほどと推定。
この状態で測定してるA/D値を読むと「65518」でした。
これが、A/D入力前にバッファアンプを入れることで
解消できるのです。
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コメント
今頃になってコメントしてすみません。
ノッチフィルタ、うまく効くもんですね。こんなにうまく行くとは思っていませんでした。あと、電流の向きが判らなくなったので質問させてください。
下から二つ目のグラフは GND→R3→ADC の方向に電流が流れている。(-50μV/1kΩ= -50nA)
一番下のグラフは Vref→(Rs+R3)→ADC の方向に電流が流れていると思うのですが、なぜか波形は上向きに変化している。これはAD620のIN+とIN-を入れ替えて測定したためでしょうか?それとも、ADCからVref方向に電流が流れているのでしょうか?
それと、Vrefから11kΩの抵抗経由でADCに入力したら、値は65535になっていて欲しいのに、65518だったということですよね。
投稿: ラジオペンチ | 2021年8月21日 (土) 21時24分
60Hzのノッチフィルタ、なかなかのもんでしょ。
昔々・・・「こりゃすげ~」って計測系回路をアレンジしたことがあります。・・・仕事ね
電流の向きですが、AD620のIN-入力はR3の右側、つまりA/Dの入力端子につなげていて、これは変えていません。(IC1はスキップで)
ですんでサーミスタを短絡した時、AD620のIN+入力はGNDに。
それでマイナスの波形が出ていますんで、A/DのIN端子から電流が流れ出して(GNDに向け)います。
オープンにして「Rs+R3」を見た時は、プラスの波形ですんで、VrefからA/DのIN端子に流れ込んでいます。
サーミスタの抵抗をRsと同じ10kΩにすると(入力電圧がVrefの中点)、電流の行き来がゼロになりました。
A/D変換中の「50nA」という値、IN端子の状態(0~Vrefの電圧)で変化するということになるかと。
このあたりを確認するための実験でした。
投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2021年8月21日 (土) 22時20分
電流の向きの解説、ありがとうございます。
R3の左側をGNDにした時の測定は、ADCの入力ピンがIN+で、GNDはIN-に接続しているものと勘違いしてました。
そんなことで、マイナス側に電流を吸い込んでいるように見えていて、何だかややこしいデバイスだなーと思ってました(笑)。回路図よく見たら負電源は使っていないので、そんなことが起こる訳が無かったです。
あと、デバイスに電流が流れ込んでいる状態を+として扱うためには、おっしゃっているような極性で接続する必要があるんですね。一つ賢くなりました。
投稿: ラジオペンチ | 2021年8月22日 (日) 09時40分
シミュレーテッド・インダクタを使ったノッチ・フィルタでの周波数を合わせ込む自由度、これはありがたいんですが「Q」をごそごそできません。
そこで「ツインT」に回帰ということになりました。
今回の60Hzのハムに埋もれた信号、そのパルス幅が18msと60Hzに近い信号でした。
60Hzとの差は5Hzほど。
これを分離したいということで、フィルタの「Q」が重要だったんです。
投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2021年8月22日 (日) 12時03分