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2018年10月20日 (土)

『配管設計者がバラす、原発の性能』

またまた図書館で借りてきた本。
    ※タイトルを「原発」で検索
・配管設計者がバラす、原発の性能
サブタイトルが「退くも進むも、そこは地獄の1丁目」。
20181020092942182_0002

「PWR」と「BWR」、どっちがエエねんを論じられてる・・・
自身を「設計者」と呼ばれてますんで、信頼できる本かと
思ったんですが・・・・
「第1章:原発との遭遇」からちょいと、アレレ?な記述が。
  『当時の東海1号炉・・・ その熱で金属ナトリウムを熱する。
   ・・・ 現在は水が主だが、当時東海1号炉の熱媒体は
   金属ナトリウムであった。』
ちょいちょい。
「東海1号機」って「黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉」。
「ナトリウム」を冷却剤に使った炉って、日本じゃ「常陽」「もんじゅ」
の2炉だけでしょ。
そして、同じ章、13頁。
  『数年後、福井県敦賀原発「ふげん」の建設にあたっても・・・
  ・・・そこが東海原発と同型の原子炉(PWR)を採用したことも
  あって、・・・』
おいおい。
「ふげん」 は重水減速・軽水冷却、圧力管型で、通常の原子炉
(PWR、BWR)とはちょい違う。
   ※「ふげん」は仕事で絡んだんで。

まだある。 15頁。
  『もともとBWR原子力潜水艦用で、小型、軽量、効率的で

  合理的な原子炉であった。しかし、そこには安全性が欠如
  しており、福島第一原発事故で、BWRの想定された問題
  が問われている。』
文頭のBWR、誤植かと思ったんですが、後半の文から誤植じゃなく
勘違い:思い違いであることが分かります。
また、33頁にも
  『動力炉・核燃料開発事業団の大山彰先生の著書にも
   書かれているが、最初に開発されたのが加圧水型(PWR)で、
  その後、原子力潜水艦用に開発されたのが沸騰水型(BWR)
  である。・・・』
とあり、かんぺきに技術史を間違っておられます。
原子力潜水艦の炉型は「PWR」でっす。
ノーチラス号 に失礼です。  参:S1W炉  S2W炉


「PWRとBWR、どっちがエエねん?!」っという論議も面白いんですが、
「もっと安全な炉を作って動かしてみようぜ!」っとか
「やっぱ核融合やろ!」っという、「20世紀からの夢の実現」は
まだまだ遠いようです。 
言っちゃおう。
オリンピックに使う予算をかけたら、別の夢の実現に近づけたのかも
しれない。


※追記:ふげんについて
「原子炉圧力容器」は無い。  (格納容器はある)
炉心にある224本の圧力管それぞれに入っている燃料集合体が「燃え」(核分裂)る。
だもんで、PWRともBWRとも違う。
炉心の構造に限れば、チェルノブイリの黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉
近い。
    ふげん:減速材は重水
    チェルノブイリ:減速材は黒鉛
沸いた「湯」は、蒸気に分離して、そのままタービンを回す。
    PWRの蒸気発生器ではない
運転しながら燃料交換できる。
濃縮ウラン以外も燃料になる。 (天然ウランもプルトニウムも使える)
重水が高価。 
圧力管を出入りする配管(冷却水が通る)がむちゃ複雑。

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コメント

検索してたら「ふげん」の歴史がまとまってました。

https://www.jaea.go.jp/04/fugen/about/compilation/report/Contents.htm

私が関わった装置の話もちらりと出ています。
聞いたトラブルの話も。

投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2018年10月22日 (月) 17時08分

「ふげん」での「トリチウム」の話。
http://igarage.cocolog-nifty.com/blog/2018/10/post-49bb.html
トリチウムは福一汚染水問題で有名かと。

投稿: 居酒屋ガレージ店主(JH3DBO) | 2018年10月23日 (火) 08時49分

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